プロゴルフの試合を見ていると、女性キャディをはじめ、選手の家族や友人など、さまざまな立場の人がキャディを務める姿に目が留まります。選手と会話を交わしたり、笑顔を見せたりする様子から、タッグごとに違った雰囲気が伝わってきますね。
私自身、キャディといえば、経験豊富な男性のプロキャディを思い浮かべていました。それだけに、さまざまな立場の人が選手をサポートする姿を見て、キャディという仕事にあらためて興味を持ちました。
そもそも、プロの試合でキャディを務めるには、特別な資格や条件が必要なのでしょうか?「キャディは誰でもできるの?」という疑問も浮かびます。
この記事では、キャディに必要な資格や条件とともに、専門知識だけではない、選手を支える大切な役割についても紹介します。

ゴルフのキャディは誰でもできる?資格・条件は?
共通の必須資格はないが、大会ごとの条件がある
ゴルフ規則では、キャディを務めるための共通の免許や、プロテストへの合格は求められていません。「プロキャディ」はキャディを職業とする人を指す言葉で、プロゴルファーのように、試験に合格した人だけが大会で務められるという意味ではありません。
そのため、職業として活動するキャディ以外にも、選手の家族や友人などがバッグを担ぐことがあります。
ただし、どの大会でも、誰でも無条件に務められるわけではありません。ゴルフ規則では、大会の委員会がキャディの使用や人選に制限を設けることを認めています。実際に務める際は、その大会の競技規定や必要な手続きを確認することが大切です。
つまり、特別な資格は必要ありませんが、大会の条件を確認し、キャディの仕事やルールを理解しておく必要があります。
キャディのルール違反で選手に罰が科されることも
資格が必須ではなくても、キャディにはルールの理解が欠かせません。キャディの行動が規則違反になると、選手に罰が科される場合があるためです。
例えば、救済を受ける際、キャディが選手の代わりにボールをドロップすることは認められていません。また、打つ前に、キャディと狙いどころを相談することはできますが、選手が構え始めた後、キャディがボールの真後ろに立って、構える向きを合わせる手助けはできません。
必要なのは知識・体力・状況への対応力
キャディには、ゴルフの知識や体力に加え、選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、あらゆる場面でサポートするための対応力が求められます。
例えば、飲み物を渡す場面は、水分補給だけでなく、緊張している選手にそっと一呼吸置いてもらう意図があることも。
選手の性格を熟知し、すぐそばで小さな変化にもアンテナを張れるキャディだからこそ、そのときの選手に合った間合いや働きかけで、本来の力を引き出せるのですね。
キャディとは、資格の有無だけでは測れない、実務的な力が必要な仕事といえるでしょう。

キャディの仕事は?専門知識だけではない役割
コースを確認し、選手の判断をサポートする
キャディの基本的な仕事は、選手が判断するために必要な情報を集め、伝えることです。
残り距離だけでなく、風や高低差、ボールの状態、ミスを避けたい場所などを確認し、狙いどころやクラブ選びをサポートします。クラブやボールの清掃、バンカーをならすことも仕事の一つです。
ただし、どこまで助言するかは選手によって異なります。積極的に相談したい選手もいれば、自分の判断を優先したい選手もいるため、それぞれに合った役割分担が大切です。
歩くテンポで、選手のリズムを整える
選手のすぐそばを歩くキャディは、自分の動きにも気を配っています。
宮里藍選手の専属キャディを務めた小田美奈さんは、選手が焦っているとき、歩幅を大きくして移動速度を保ちながら、歩くテンポを落とす工夫を紹介しています。プレーの進行を遅らせず、選手にも落ち着いたリズムを感じてもらうためです。
物を渡す際にも、手を離すタイミングを少し遅らせるなど、一呼吸置くきっかけをつくることがあるそうです。
「落ち着いて」と声をかけるだけでなく、自分の動作を通じて働きかける。観戦しているだけでは気づきにくい、細やかなサポートですね。
あえて先に言わず、選手の感覚を尊重する
知っている情報をすべて伝えることが、良いサポートになるとは限りません。
2022年に17歳で全米女子アマチュア選手権を制した馬場咲希選手を、中学1年生から指導してきた坂詰和久コーチ。自身もキャディ経験がある坂詰コーチは、選手に先入観を与えないよう、ラインやクラブ選びについて、自分から先に助言しすぎないと話しています。
例えば、下りのパットで速さを強調すると、選手が必要以上に意識してしまうことがあります。そのため、選手の判断に問題がなければ、あえて余計な言葉を加えないそうです。
また、ミスを引きずっているときには、原因を考え続けるより、次の一打へ気持ちを向けられるよう働きかけると説明しています。
何を伝えるかだけでなく、いつ伝えるか、何を言わないか。 選手の感覚や自信を守るために、言葉を選ぶこともキャディの大切な仕事です。
暑さによる消耗を抑え、集中できる状態を保つ
コース上では、天候への対応も欠かせません。
小田美奈さんは、日傘の使用について、日焼け対策だけでなく、暑さによる余計な体力消耗を抑える意味があると説明しています。待ち時間には日陰を利用するなど、プレー以外の時間にどう過ごすかも大切だとしています。
こうした考え方からも、道具を整えるだけでなく、選手が最後まで集中してプレーできる状態を保つことの大切さが分かります。
キャディのサポートは、距離や風を読む専門知識から、動作や言葉、コンディションへの配慮まで、さまざまな場面に及んでいるのですね。

男子ゴルフで女性がキャディに選ばれる理由は?
大切なのは、信頼して一緒に戦える相手かどうか
女性キャディといっても、経験豊富なプロキャディから、選手の家族や友人まで、その経歴や関係はさまざまです。
的確な助言や、気持ちを切り替える手助け、落ち着いてプレーできる安心感など、選手が求めるサポートは異なります。そうしたサポートを任せられる相手として、女性キャディが選ばれることもあるみたいですね。
今平周吾選手の例から、そのタッグの理由を見てみましょう。
今平周吾選手の例|成功体験の共有と、気負わずに戦える安心感
2017年の関西オープンで初優勝を支えた若松菜々恵さんは、当時、大学のゴルフ部に所属していました。同年9月に再びタッグを組んだ際、今平選手は「前回優勝しているので良いイメージでできるかな」と話しています。
初優勝を一緒につかんだ相手だからこそ、「また良いプレーができそうだ」と思える。女性だからというより、二人で共有した成功体験が、前向きに試合へ臨む支えになっていたと考えられます。
また、今平選手は、若松さんと組む際に自分で歩測することも楽しんでいました。2019年の再タッグでも、普段はプロキャディに任せていた情報を自分で確認し、初心に返った感覚を語っています。いつもとは役割分担を変え、自分で考えながらプレーする新鮮さもあったようです。
一方、現在の妻・奈未さんと組んだ2026年9月の大会では、距離計算やクラブ選び、ライン読みは今平選手自身が担当。奈未さんには風について意見を聞き、飲み物を渡すなどのサポートを受けていました。
そのときの心境を、今平選手は「リラックスして回れています。いい意味で気合いが入らないですね。楽しくやっています」と話しています。
ここでいう「気合いが入らない」は、意欲がないというより、気負わず自然体でプレーできるという意味に受け取れます。専門的な判断をすべて任せるのではなく、自分で判断しながら、信頼する相手にそばで支えてもらう。その組み合わせが、今平選手にとって心地よかったのでしょう。
的確な助言をもらえることも、一緒にいると自信が持てることも、落ち着いてプレーできることも、選手にとっては大切なサポートです。信頼できる相手と役割を分けて戦う選択の中に、女性キャディとのタッグもあるんですね。
細野勇策の例|江崎楓キャディと分かち合った初優勝
細野勇策選手も、2026年の日本プロゴルフ選手権で、江崎楓キャディとともにツアー初優勝をつかみました。大きな目標を達成した喜びを分かち合えたことは、二人にとって特別な経験になったのではないでしょうか。
細野選手の経歴や、江崎さんとのタッグについては、こちらの記事で紹介しています。
まとめ
- キャディに共通の必須資格はありませんが、大会ごとの条件や手続きの確認が必要です。ルール違反で選手に罰が科される場合もあります。
- 仕事はコース攻略の助言だけでなく、道具の管理、選手の体調への配慮、メンタル面のサポートまで広範囲に及びます。
- 女性キャディが選ばれる理由は一様ではありません。専門知識や経験に加え、気持ちを理解して支えてくれることや、一緒に戦う相性も大切だと考えられます。
- 今平選手の例からは、初優勝の成功体験を共有することで生まれる自信や、信頼する人と気負わずに戦える安心感がうかがえます。
これからは選手のプレーだけでなく、キャディの動きや二人のやり取りにも注目すると、試合観戦がさらに楽しくなりそうですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!





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